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書評『魂振り 琉球文化・芸術論』

書評『魂振り 琉球文化・芸術論』

魂振り

高良勉著
未来社

本書は琉球弧の詩人・批評家高良勉が90年代半ばから現在まで書き綴った評論・エッセイをまとめた待望の書であり、主に文化・芸術論が収められている。文学をカテゴリーとした『言振り 詩・文学論』も引き続き出版の予定があるという。一読著者の関心領域の幅広さに舌を巻く。それはたんに知識欲から生まれたものではなく、生まれ育った植民地的状況への抵抗の念をどす黒いまでに内包しているがゆえに、お行儀の良い沖縄文化解説本にはないヒリヒリとした刺激を読む者に与える、知/血の書である。そのエッセンスが「文化遺伝子」という新しい概念によく現れている。

一般的に「伝統文化」といえば、沖縄の個性として「観光」「自然」などとともに紹介される。著者はこれを、保守や継承の面が重視されがちだとし、代わって、環境の変化によって変容・組み換えさえ行われる遺伝子の概念を加え、創造性を大胆に肯定する。伝統文化が一地方・一国家の枠に閉じこもりがちなのに対し、「文化遺伝子」はグローバルに交流が可能となる。さらには、時間的にも何千年や何万年というスパンで捉えることができると。

その長いスパンの文化を観察するのにもってこいなのが、北は奄美から南は与那国までにわたる琉球弧の「神祭り」だと著者はいう。「神祭りこそ文化遺伝子のタイムカプセルだ」というその表現が大袈裟でないのは、本書にも記されている著者の旺盛なフィールドワークの報告を読めば納得できる。著者の移動は、原始から現在まで続く古層文化としての自然崇拝、そして祖先崇拝という琉球の信仰の二大特徴を探求する、厳粛な欲望のベクトルともいえる。

ところで著者はこの後興味深い論理展開をしている。まず始めに、琉球民族やアイヌ民族など先住民族の権利がようやく認められるようになることは、同時に国境や国家のあり方そして資本主義を批判しうるとした上で、次のように述べる。

《これらの〈文化遺伝子〉のもっている差別、抑圧に対する抵抗力や生命力のエネルギーは実にすばらしい、としか言いようがない。これらは病気に強い生物のDNAのようなものだ。
生物学や農学の教えるところによれば、どんなに品種改良されたハイブリッドでも、ときどき〈原種〉との交配をしないと病気などへの抵抗力が低下するらしい。そして雑種の方こそたくましく、さまざまな能力に優れていることは身のまわりの動植物を見ても明らかである。
文化もそうではないか。異文化接触や異文化交流を行った方が、活性化し、新しい創造力が生まれるのは、日本の文化史を見ても一目瞭然である。朝鮮や中国、そして西洋やアメリカとの文化交流が、どれだけ日本の文化・学芸を発展させたことか。》

琉球の文化遺伝子は抵抗力があり雑種である。雑種は交配によって生まれる。それは異文化交流により創造力が新しく生まれることに似ている。雑種性を賞賛することは、血統にこだわる日本の文化を相対化するという視点。

私はウチナー×ヤマトの二項対立では、ヤマトに対する抵抗のベクトルが強いあまり、ウチナーは統一性・凝縮性に向うかと思っていたが、そうではないらしい。一ではなく多であるという。だからこそ豊穣で雑多な琉球弧は包摂をあくまで拒否するのか。

最後に個人的な関心に照らしていえば、「交配」「交流」は「文化」に属する言葉であるが、そもそも「文化」の前には「経済」があるのではないか。それを現す概念として「交換」という言葉を用いたい。資本と国家に対抗するには不可欠な認識であるがゆえに。それは別の機会に書いてみたい。

(西脇尚人 2011/8/27)

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