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書評『原発事故から避難するネットワークの動き』

書評『原発事故から避難するネットワークの動き』

けーし風71号

BOOKS Mangroove

季刊『けーし風 第71号 2011年6月 特集 放射脳汚染時代に向き合う』は、鳥山淳(同誌編集運営委員)による仙台在住の早尾貴紀(パレスチナ・オリーブ)へのインタビューを掲載している。自身避難者でありかつ支援者である早尾の即断・逡巡・思考への意志などを伴う移動の足跡が興味深い。

早尾は福島原発事故の深刻さを素早く察知し、一人息子を連れて関西に避難する。4月の新学期が始まるタイミングの後から放射性物質の拡散状況を小出しにする政府の動きをどうみていたかという鳥山の質問に対し、早尾は「『避難を絶対させない』という強い意思を感じ」たという。15日あたりから文化省が出し始めた学校の「20ミリシーベルト」という数値をリアルタイムで出していたら、避難を促進させ東北が空洞化することになるだろう、それは許さないという国家の意思を。福島県知事は「県民の人口流出を抑えるためにがんばった」とこれに応じ、学校現場からは「数値はそんなに高くないので大丈夫でしょう」という返事を返され、放射能汚染に対する危機意識が薄いことをダイレクトに感じたのだ。中央から行政組織の末端に至るまで貫徹する国家の交換様式を。

早尾の即断は当然だ(と私には思われる)が、東北中の人々が同じ判断や行動をしたわけではない。同じように避難した人もいるが、現在までとどまり生活を続けている人も多い。一時は避難したが、新学期を迎えるタイミングで戻ってしまった人々もいる。その中には残った周囲の人たちからの非難を恐れて戻ったという人もいる。

この状況に関し鳥山はこう述べている。「お上の言っていることが正しくないと感じている人たちはいるにもかかわらず、それを自分たちの動きとして社会化するという選択肢がないのでしょうね、多くの人たちにとっては」。東北人に限らず日本人全体にいえる理性の不在をほのめかすように。

これに対し早尾は、関西で受け入れ表明をしてくれる人たちの反応の中に、「どうしてみんな来ないんだ」というもどかしさを訴える声があったと述べた後にこう述べている。

「しかしそこでは、現地の人たちがどういう状況の中で生きているのかというリアリティに欠けているところがあって、政府や県にだまされているから出てこれないとか、危機感に欠けているとか、短絡的に考えられてしまう。でも出てくるのは簡単ではなく、最初にパッと出てこれた人は親族友人など頼れるところがあった人たちなんですよね。(中略)ネット上の呼びかけだけでは踏み切れないわけです。メーリングリストやツイッターでの情報を受取れる人は受取っていますが、もう一つのハードルがあって、それを越えるには直接、福島の中に入ってつながっていくしかないと思いました。」

実際早尾は福島までネットワークを拡げ、放射能の内部被曝問題に詳しい矢ヶ崎克馬琉球大学名誉教授の講演会を実現させるなどした(OAM「オルタナ・クール」を観た早尾から連絡をもらった私が矢ヶ崎氏との仲介をした)。その話を聞いた主催者の仲間は北海道へ避難してしまったという。

私は早尾と同じ話を、やはり宇都宮から家族を連れ沖縄に避難してきた友人から聞いていた。「早くみんな避難しろと外部の人はいうけど、実際生活している人たちはそう簡単にはいかない」と。10年前にエネルギー問題、原発問題などを共に学んだ仲間のこの言いよどみに私は意外な気がした。この後、彼は身重の妻と一人娘を沖縄に残し、宇都宮へ戻っていった。

さて、ここで問題にしたいのは早尾がいう「もう一つのハードル」についてである。私はそのハードルの正体を、共同体による贈与とお返しの互酬制の交換様式、そして国家による略取と再分配の交換様式であるとひとまずみなしてみる。その交換様式に対抗する術に関心がある。孤立していた人たちのネットワークを構築せんとする早尾のアクションに、自由な交換をみている。

(西脇尚人 2011/7/16)


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