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書評『観光コースでないハワイ』

書評『観光コースでないハワイ』

観光コースでないハワイ

高文研
高橋真樹=写真・文
取材協力=一瀬恵美子
●B6判 240頁
●2011年6月27日発行
●本体価格1700円

本書を読み、ハワイと沖縄の共通性に改めて驚かされる。植民地支配、文化を奪われた歴史、米国の軍事支配下にあること、観光大国としての虚像など「楽園のもうひとつの姿」を知るにつけ、最大のお客様である多くの日本人には驚きの内容だろうが、沖縄で生活する者には我がこととして強い既視感を伴わずに読むことは難しいだろう。

ハワイの象徴・ダイヤモンドヘッドの東側にあるカハラ地区は富裕層による高級住宅街として有名だが、著者はそれと対称的な島の西側ワイアエナ海岸のテントが並ぶ光景を描写する。それは行き過ぎた観光が島に何をもたらすのかを教えてくれる。観光客の増加は大量のゴミを発生させ大地を汚染させる。観光業で働く末端の労働者は低所得から貧困が増長する。ハワイは全米で最も家賃が高い州ということもあり、家賃を払えない者はテント生活を余儀なくされるのだ。

ハワイ大学ハワイアンスタディーズ教授のハウナニ・ケイ・トラスクは、ハワイのなにもかもが、観光客、非先住民、来訪者のために優先され、フラなどの先住民文化も商品として売りに出される現状を批判した上で、「観光客にはもう来て欲しくない。うんざりしている」と憤懣やるかたない。これに対し、著者は自身も含め「多くの日本人にとっては、衝撃的なメッセージだ」とショックを隠さないが、沖縄に住むわれわれはそのようにナイーブさを吐露して終わるわけにはいかない。そうではなく「これは私たちだ」というシェアから始めることになろう。

二章「基地の島を歩く」では「ハワイの黒幕」ダニエル・イノウエ米民主党上院議員について書かれている内容が興味深い。国防総省や軍需産業と太いパイプを持つイノウエは、ハワイ経済活性化のために米本土から次々と軍関係の事業を請け負い成功させてきた。同時にそれは貴重な自然を破壊することをも意味した。このようにハワイの軍事化を進めてきたイノウエが長い期間支持されてきた理由は2つあると著者はいう。一つは、実際にそれがハワイの産業を潤わせているからであり、二つ目は、イノウエがハワイの日系二世で構成される伝説の部隊「四四ニ連隊」の英雄として生きる伝説と化しているからだ。イノウエは「普天間移設」問題で米民主党重鎮として沖縄メディアに登場し、われわれはその名前をよく耳にするが、本書で彼の来歴を知れば、なぜ彼が日米合意の辺野古案を押し通そうと固持するのか納得できる。

しなしながら本書の魅力は、このような抑圧的状況から人々が立ち上がる実践を丹念に追いかけているところだ。ホノルルのチャータースクールの事例紹介は中でも興味深い。チャータースクールとは、州から認可を受け、一般の公立高校とは異なる目的で運営されている学校のこと。一人の女生徒から「ハワイはアメリカに占領されています」と挨拶され、著者はそんなことをいって大丈夫なのかと気を揉む。一般的にハワイではアメリカに併合されて幸せになった歴史しか教えないからだ。それに対する学校スタッフの答えがこうだ。「この学校ではハワイアンの視点があることも教えている。子どもたちは、あなた方の歴史には異なった見方があることを教えたかったのではないか」。異なった視点からその「幸せ」が本当なのかを問いかける必要があるのだと。その問いかけから自分たちが生まれ育った地域や環境を守ろうという意識が生まれるのだと。

同じように沖縄の新しい者たちが「沖縄はアメリカとヤマトに占領されています」といえば多くの日本人は驚くだろう。しかしそれは「あなた方の歴史には異なった見方があることを教えた」いのだからそうしてよいのだ。あとは「あなた方」の問題であるのだから。

(西脇尚人 2011/7/9)


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