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書評『本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること 沖縄・米軍基地観光ガイド』

書評『本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること 沖縄・米軍基地観光ガイド』

本土の人間は知らないが

書籍情報社
前泊博盛(沖縄国際大学教授・前琉球新報論説委員長)・監修
須田慎太郎・写真 矢部宏治・文
定価1300円(税別) 6月12日発売(沖縄のみ6月6日) オールカラー・352ページ 四六判並製。


挑発的なタイトルである。『本土の人間は知らないが』はむろん「本土の人間」に対してじゅうぶん挑発的であるし、米軍基地を観光地と位置づけることについては「沖縄の人」に対して挑発的である。さらに挑発的であるのは、本書を発行した書籍情報社は主にガイドブックに力を入れている出版社であり、そもそも社会性あるいは硬派なイメージで売っているわけではなく、本書も装丁からしてガイドブックの体裁をとっている点にある。

いざ書店に並ぶとき、どのコーナーに置くべきか、ガイドブックのコーナーに置くべきか、書店員の頭をいささか悩ますことだろう。ガイドブックコーナーから本書をたまたま手にした人がいるなら、沖縄の基地問題などそれまで関心がなかったが、圧倒的な迫力でもって展開する須田慎太郎の贅沢な写真に惹きこまれ、ページをめくる姿が想像されもする。それこそが同社の発行者であり文章を担当し、須田に声をかけ集中的な取材で島を歩き回った矢部宏治のねらいであろう。

本書は須田の写真と矢部の文章の交互編成からなる。須田の写真は沖縄の基地について撮られた従来の写真とは異なる。それは執拗かつ即物的である点において。こんなポジションが可能であったのかという驚きの連続であるが、それはいわゆる報道写真でもないし、状況にうながされるように撮られた沖縄の写真家たちのそれとも違う。たとえば辺野古弾薬庫を撮った写真(40~41ページ)は、かつて核兵器貯蔵が噂された禁断のエリアがあきれるほど鮮明に捉えられているが、「フェンスの網の目は粗いので、写真ではこう見えるが、実際はフェンス越しの風景」とキャプションで種明かしされる。

さらに構成として説得力がある例として、国道58号線沿いの車両置き場と整備工場と題された2枚の写真の配置を挙げたい。ベトナム戦争時に目にしたジャングル仕様のダークグリーンの戦車の写真が上部に、湾岸戦争やイラク戦争から採用された砂漠仕様の薄いベージュ色の戦車の写真が下部に配置され、中間に配されたキャプションで次のような「ガイド」がなされる。

《だから難しい本を読まなくても、沖縄の人たちは米軍の抑止力について、本土の評論家よりもずっとよく知っている。ダーク・グリーンやベージュ色の戦車が、日本を守るためにいるわけではないことを、日々の生活のなかで自然に知っているのだ。》

須田の写真に負けじと相当な分量で書かれた矢部の文章が圧倒的に読ませる。鳩山民主党の「迷走劇」を目にし「なんでこんな問題でやめてしまうんだ」と単純な疑問を抱き、それまで沖縄の基地問題についての関心などなかったと告白する矢部は、しかしながら沖縄取材で聞き取った市井の人々の声にこそその疑問の解があることを発見し、目からウロコがおちる。さらにそのウラを取るために様々な文献にあたり、一つの核心をつかむ、日米安保条約についての真実という核心を。占領軍から名前が在日米軍と変わっただけで実質的に米軍の占領が現在まで継続されていること、絶対平和主義にもとづく日本国憲法と、国内に米軍の駐留を認めた日米安保条約は表裏一体の関係にあることを。

矢部の気づきから改めて確認しておく。基地問題を中心とした「沖縄問題」は決して沖縄の問題などではない。戦後日本を規定し呪縛し続ける日米安保条約が核心としてある、日本人全体として共有し第一に解決すべき問題である。それを『本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること』であることが致命的に大問題であることを矢部は奇跡的に知りえた。そもそも「普天間移設問題」などと短い見出しで報じるマスコミの姿勢、そしてそれを口にしなにか分かった様な気になっている大部分の「日本人」こそ、この世で一番無知な人々であることを知ってしまったのだ。

米軍基地と観光は沖縄のなかで2つの異なる表象をもたらす。ひとつは観光の邪魔になるものとして、ひたすら基地を無きもののようも扱う姿勢として。観光ガイドブックのマップやカーナビにおいて、米軍基地は空白地帯として現される。空白にしてはあまりにも広大であるため、かえって目立ったりするのだが。もうひとつは、基地の街・沖縄市のようにその価値観を転倒させ積極的にPRするという姿勢として。そこでは「チャンプルー文化」や「多文化共生」などが謳われることにより、基地のマイナス面を覆い隠そうとする。本書の姿勢はそのどちらでもない。米軍軍基地観光ガイドという挑発的な試みは沖縄県内の欺瞞を見透かし、さらに出版業界を、沖縄と本土を横断する。

(西脇尚人 2011/6/18)

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