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書評『ただ、誠を尽くして浮世を渡る』

書評『ただ、誠を尽くして浮世を渡る』

ただ、誠を尽くして浮世を渡る

著者:高橋淳子
出版社:日本出版社
サイズ:四六判/203頁
発行年:2010年10月
1365円(内税)

「抱瓶」。陶芸好きの私がこの単語をネットで検索したとき、一番トップに出てきたページが著者が営む『沖縄料理・抱瓶』だった。私と抱瓶の出逢いはそんな偶然的な出逢いからだったが、著者の言うように「人生は一期一会の旅ですが、不思議と出会うべき人には出会います。」その通りだと思った。私と抱瓶の出逢いも出逢うべくして出逢ったものだった。

 著者の歩んだ半生は「沖縄を背負って格闘した一少女」「沖縄の‘おしん’の波乱に富んだ半生」などと本の帯では紹介されている。だが、著者が喜んで『沖縄を背負った』わけでもなく、沖縄で特別に著者の家だけが貧しいということもなく、代表的な『おしん』だったわけでもない。

あの頃の沖縄は、聞くところによると、皆そうだった。大阪や神戸にパスポート片手に出てきた少年少女は皆、著者のような差別体験を経験している。今でこそブームになっている沖縄料理屋や韓国料理屋は『朝鮮人・琉球人お断り』と張り紙をされた店に入れなかった人々の集いの場だった。うちなーんちゅであることを隠し、きれいな日本語を話すことが沖縄出身の人々が浮世を平和に渡る最善の道だった。

そんな状況の中、『ただ、誠を尽くして浮世を渡る』ことがいかに困難なことか。現在の沖縄ブームに隠された差別に直面するだけでも、心が折れそうになり、「血」が煮えるような抑えられない気持ちでいっぱいになるというのに。

 本書は著者の半生が描かれてるというだけの本ではない。一人の女性の人生を通して、『沖縄』自身の半生、時代が見えてくる。著者が自身の半生を語ってくれることで、今まで書かれてこなかった『沖縄の歴史』をしっかりと刻んでくれた。

 日本(本土)で生き抜き、「きよ香」そして「抱瓶」を守り、築き上げてきたことは『沖縄』自身が沖縄を守り、築き上げてきた沖縄の歴史そのものだと感じずにはいられない。

「ただ、誠を尽くして浮世を渡る」

私も、年齢を重ねるとそう生きることができるのだろうか。『沖縄』に対する『現実』を自分自身の経験を通して本書のように優しく穏やかに語れる日が来るのだろうか。

著者は沖縄に帰ってきた。沖縄も、もうそろそろ沖縄に帰ってもいいんじゃないか。 そのために、私たちうちなーんちゅ全体が「誠を尽くして」浮世を渡れるかどうかが試されている。嬉しいことも辛いことも含めての人生。『人生万事塞翁が馬』。日本(本土)で生きる私たちのような若い世代に、日本社会とどう向き合い、付き合ってゆけばよいのかを教えてくれた一冊。沖縄の先輩が残してくれた、うちなーんちゅとしての生き方。

(金城 有紀 2011/4/2)

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