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書評『沖縄戦と民間収容所-失われる記憶のルポタージュ』

書評『沖縄戦と民間収容所-失われる記憶のルポタージュ』

沖縄戦と民間人収容所

著者:七尾和晃
出版社:原書房
サイズ:四六判/358頁
発行年:2010年12月
2520円(内税)

開拓期のアメリカにおいて「誰もが知るように、アメリカンインディアンは、白人たちによって土地を追われ、保留地へと追い込まれていく。その逃避の日々を、インディアンの部族はいつからか『涙の道』と語り継ぐようになる。」

著者の視線は、アメリカ西部の「保養地」へと追い込まれていくアメリカンインディアンが名付けた「涙の道」が、大西洋を貫きながら、第二次大戦で南洋諸島に形成される捕虜収容所を経て、沖縄に辿り着く。本書は七尾和晃によって綴られた、沖縄戦と民間収容所についての秀逸なルポタージュである。同時に、立体的に収容所を取り巻く当時の状況を、証言や資料を介しながら丹念に解釈していく、分厚い記述である。

第一章「太平洋の収容所」は、サイパン島、テニアン島におけるフィールドワークと証言により綴られる。大戦前に日本占領下にあった南洋諸島を、米軍が次々と占領下に置き、各地に日本人を収容する施設を数多く建設する。その収容所の中には、沖縄からの多くの南洋移民が収容されていた。

第二章「カンパンの村」においては、米軍によりつくられた「カンパン」に焦点が当てられる。「カンパン」は捕虜収容所を意味するcompoundを、収容された人々が聞き、使った言葉である。数々の捕虜収容所の誕生は、外からの避難民の過剰な流入により、それまで形成されていたそれぞれのシマの小宇宙を破壊した。しかし収容所内で同じシマの人々同士はまた同じシマを形成した。同時にそこで新たに知り合った違うシマの人々の関係性が戦後沖縄の社会的・経済的基盤にもなっていく。

第三章「もうひとつの特殊部隊」では、米西海岸の名門大学スタンフォード大学に設立されたフーヴァー研究所を中心に、沖縄上陸を踏まえた米軍による詳細な情報収集が行われたことが記される。米国の名門大学からは、戦争で確保した太平洋の島々を統治するため「島嶼管理専門官」とも呼ぶべきもう一つの「特殊部隊」がそれぞれの島々へ送り出されていったのである。

第四章「それぞれのバックナー日記」と第五章「涙の道」は、戦中・戦後の沖縄を生きた一見別々の生が、著者の記述によりブリコラージュされる。アメリカ、日本(本土)、そして沖縄内部の人びとのそれぞれの人生。沖縄戦という過酷な状況を生きたそれぞれの生は、ほんとうに様々であるということが分かる。

本書を読んで気づかされることは、語り得ないということが、どれだけのことを語っているのか、ということだ。語り得ないことに今一度耳を傾け、「訊く」のではなく「聞こえる」時を待つことの可能性を、七尾は本書で開いている。

(森啓輔)
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