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書評『台湾・韓国・沖縄で日本語は何をしたのか』

書評 『台湾・韓国・沖縄で日本語は何をしたのか』

書評『台湾・韓国・沖縄で日本語は何をしたのか』


著者:古川ちかし・林珠雪・川口隆行
出版社:三元社
定価:2600円+税 


 戦前の日本の植民地だった台湾では、その一部エリートと一般台湾人の間の「知の回路」に大きな断絶があった。エリートは口コミで日本の植民地政策の実態を啓蒙しようとしたが、成果は小さかった。一方、農民組合は歌謡で訴える手法で民衆に訴えてゆく。

 「第二章 植民地期台湾人の『知』的体系――日本語に『横領』された『知』の回路」(李承機著)では、1920年代以降の日本による台湾の植民地化を通してメディアの役割に触れ、台湾人の「知」の回路と日本語との問題が考察されている。

 1895年から始まった日本の植民地統治で、マスメディア、日本語教育が移植され、それを解する一部の知的エリートと日本語リテラシーのない大部分の「民衆」とに、台湾社会が分断された。その暴力により台湾人固有の言語は近代化を遂げられなかった。

 しかし、日本語教育を受けたエリートたちは、日本語を「道具」として操り、それを武器に日本の植民地政策に抗う逆転の発想で打って出た。日本語によって得た外からの情報で眼を開いたエリートたちは、「民衆」を啓蒙し、民意を盛り上げようとする。この時期、日本語習得率10%前後の「民衆」に対して漢文メディアを興すなどする。 

 さらに半数近くの台湾人が文字の読めない現実に対しては、「口コミ」「講演」という聴覚回路に訴えるメディアが相応しかった。これにはそれになりに効果もあったが、時間軸と空間軸の制限もあり、限界があった。

 エリートは悩み、そして焦る。「……台湾人エリートは、非日本語『空間』を改造・動員しようとすればするほどその『断絶』を感じ、しかも『知』の伝達を難しく感じることになる。つまり、非日本語『空間』における『知』の回路が日本語に『横領』された現象は、台湾人『民衆』に対する台湾人エリートの動員力を低下させ、本来エリートが有するべき動員力も『横領』されることとなった」。

 一方、1926年に成立した台湾農民運動の母体である台湾農民組合は、「農民歌謡」を作った。通俗の台湾語を用い、歌い易い歌謡で「知」の回路を作ろうとしたのだ。人々はこれらを歌い続け、広まる。簡吉というカリスマ的リーダーは、歌謡の作成に関与しながら、各地の講演宣伝と「農村読書会」の設置に尽力した。それ以外にも一般の農民に対し「簡易漢字」、「農民歌謡」を教えることによって、日本の植民地政策・搾取の現実を訴えた。

 国民国家のメディアを使った「暴力」に対して、もう一つのメディアで抗う台湾人エリート。しかしその試みはことごとく「横領」される。やがて1930年代に入ると「大衆文化」=資本制経済が侵食し、台湾人も「日本」や「世界」を消費する。その大きな波に揉まれ、日本語と台湾人の関係は複雑さを増した。

(西脇尚人 2007/05/19)

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