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比嘉康雄展関連シンポジウム「今、なぜ比嘉康雄か」

比嘉康雄展


沖縄県立博物館・美術館で開催中の「母たちの神 比嘉康雄展」関連シンポジウム「今、なぜ比嘉康雄か」が7日、同館博物館講座室で催された。比嘉康雄は1968年B52爆撃機の墜落事故を警察官として目の当たりにし、激動の沖縄を捉えようと写真家に転向した。その後宮古島の祭祀世界に衝撃を受け、琉球弧の古層を追求する写真を多く残し、2000年に急逝した。

シンポジウムに先立ち、展覧会を駆け足で観た。比嘉康雄といえば、久高島であり宮古島狩俣の祭祀という地名が冠につく。それぞれが聖地として独立した空間としてみなされている。しかし、今回の展覧会では、その2つを中心に他の琉球弧の祭祀空間と混ぜ合わせ、順に「神迎え」「神崇み」「神女」「神願い」「神送り」という章立ての元に構成されている。つまり、久高島の神迎えの写真の隣に狩俣の神迎えの写真が、そしてその隣には奄美の神迎えの写真が、というように設置されているのだ。いってみれば地域別カテゴリーからテーマ別カテゴリーへ編成したということか。

いうまでもないことだが、それぞれのシマは独立した空間であり、祭祀行事もそれぞれ違っている。琉球弧の「文化の多様性」をいうとき、それぞれのシマを一括にまとめるという手法はいかがなものかという疑問符がつきそうだ。この構成は、生前の比嘉未完の写真集「母たちの神」の構成、つまり比嘉自身の編集によるものだという。

シンポジウムでもこの件は話題に出た。安里英子(フリーランス・ライター)も最初は違和感があったと認めつつ、その答えは出ていないと答えた。高良勉(詩人)は、あくまで想像だがと断りつつ、「(比嘉は)狩俣を中心とした総集編のようなものを作りたかったのではないか」と推測した。比嘉豊光(写真家)はこのように皆で議論できることを肯定的に捉え「未刊だったから良かった」と応じた。

コーディネイターの後田多敦(海邦市民文化センター理事)は、比嘉康雄には社会的状況の「今」を捉えた写真などもある中で、なぜ祭祀空間のみに限定した展覧会なのかという問いをたてた。これに対し比嘉豊光は「今の沖縄の文化状況は東京に取り込まれている。沖縄から発信できるものはこれしかない」と答えた。

祭祀空間に無遠慮に侵入し、「取材し」「切り取り」「消費する」本土からのカメラマン、観光客らを払いのける役割を任されることがあるという高良は、視る⇔視られるという相手との関係性を重視した自らの撮影方法を「受視」と造語した比嘉が、出来上がった写真を可能な限り被写体へ返していったというエピソードを紹介した。

後田多の問いかけには、現在の沖縄のおかれた状況が背景にあるだろう。絶えず基地問題などアクチュアルな課題への対応が問われるところの沖縄。それに対し、たんに撮影して記録することのみならず祭祀空間という精神世界へ没頭した写真家の展覧会を、没後10年に、しかも政治的な課題は10年前と変わるどころかまったく解決されていないこの沖縄において開催することの意味。

翁長直樹(同美術館副館長)は、近代が生み出した美術館という男性性を含意する場所で、女性中心の祭祀空間に魅せられた比嘉の写真展を開催することは矛盾を孕んでいると自己韜晦した上で、近代の問題について言及した。沖縄にとっての近代とは何であったか?それは日本化であったと。

これまでの議論をたどっていくと、少なくともパネリストの間では、沖縄では近代化=日本化=消費文化=開発と認識されていることをまずは確認してみる。それと同時に、祭祀空間へ、滅びない魂の世界へ沈潜していった比嘉康雄を「今、なぜ?」と問いかける。つまり、比嘉の祭祀世界は近代と対極的な場所にあるとみなされている。このあたりはしっかり議論すべきだろう。琉球弧の祭祀空間をたんに反近代として設定することはロマン主義に陥りやすい。反近代の中身を吟味することが求められる。フロアからは川満信一(詩人)が「祭祀空間にとどまらず、そこで思想を鍛え上げること」と発言した。私見では、祭祀空間を吟味することは、間違いなく国家とは何かという問題にいきつく。

(西脇尚人)

関連イベント:
日時:2010年12月5日(日) 13:00~18:00
場所:沖縄県立博物館・美術館 講堂
「生きること、祭ること、迎えること‐琉球弧の祭祀世界と生死観‐」
●第1部 映像上映
・大重潤一郎「沖縄久高島・原郷ニライカナイへ‐比嘉康雄の魂‐」
 ・比嘉豊光「比嘉康雄」
●第2部 シンポジウム
コーディネーター:安里英子
パネリスト:赤嶺政信、阿満利麿、稲福みき子、奥濱幸子、西谷修

日時:2010年12月25日(土) 14:00~17:00
場所:沖縄県立博物館・美術館 講堂
●第1部 対談
東松照明 × 仲里効
●第2部 シンポジウム
コーディネーター:大城仁美
パネリスト:赤坂憲雄、小原真史、小橋川共男、土屋誠一、仲里効
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